フランチャイズ 変動費

「フランチャイズ経営の落とし穴」──閉店率を左右する“固定費と変動費”の真実とは?

1. フランチャイズ経営における固定費と変動費の基本を理解する

フランチャイズ経営を検討する際、最も基本となるのが「固定費(Fixed Cost:FC)」と「変動費(Variable Cost:VC)」の違いとそれぞれの役割です。これらの費用は、損益分岐点の計算や店舗の収益性分析に直結するため、独立・脱サラして開業を目指す人は避けて通れない知識です。

まず、 固定費 とは、売上に関係なく毎月一定で発生する費用を指します。代表的なものには、店舗の家賃、人件費(社員の固定給)、設備の減価償却費、フランチャイズ本部へのロイヤリティ(一定金額型の場合)などがあります。特に、都市部や駅前立地などでは家賃が高額になる傾向があり、固定費が経営を圧迫する大きな要因となりがちです。

一方、 変動費 は、売上や販売量に応じて増減する費用です。仕入れコストや材料費、水道光熱費、外注費などが該当します。たとえば飲食系フランチャイズでは、仕入れにかかる原価が売上の40〜50%を占めるケースもあります。つまり、売上が伸びればそれに伴って変動費も増えますが、赤字の際にはある程度下がるため、損失リスクを緩和できる側面もあります。

このように、固定費と変動費のバランスを正しく把握することで、事業計画の現実性が大きく変わってきます。たとえば、固定費が月100万円で、変動費率が50%という場合、損益分岐点売上は200万円となります。このような計算ができるようになると、自分にとって無理のない経営ラインを把握できます。

また、最近は「変動費ロイヤリティ型」のフランチャイズモデルも増えてきました。これは売上に応じてロイヤリティが変動する仕組みで、経営者の心理的負担が軽減されやすく、スタートアップ段階のフランチャイズオーナーにも人気です。コメダ珈琲店やローソンなどもこのモデルを部分的に採用しています。

開業前に、予想される固定費と変動費を一覧化して「月次損益シミュレーション」を作ることは非常に効果的です。初期費用だけでなく、ランニングコストに目を向けることで、長期的な経営視点を持てるようになります。自分が目指すライフスタイルと照らし合わせながら、どこにどれだけの費用をかけるかを戦略的に設計することが、フランチャイズ成功の第一歩となるでしょう。

2. VC・FCを活用した損益分岐点分析のやり方

フランチャイズ経営では「いくら売り上げれば黒字になるのか?」を明確にするため、損益分岐点(Break Even Point)の計算が極めて重要です。この損益分岐点を導き出す際に必要となるのが、先ほど説明した「固定費(FC)」と「変動費(VC)」です。

では、実際の計算方法を紹介しましょう。

損益分岐点売上高の公式は以下の通りです:

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

たとえば、固定費が60万円、変動費率が50%(0.5)とした場合、

60万円 ÷(1 − 0.5)= 120万円

となり、この月間売上を超えれば黒字になる、というシンプルな構造です。このような数式を用いることで、事業計画に現実味を持たせることができます。特に脱サラして初めてビジネスを運営する方にとっては、漠然とした「売上目標」ではなく、明確な「損益分岐点目標」を立てることがリスクを抑える鍵となります。

では、実際に損益分岐点が高くなってしまうケースとは何でしょうか? 代表的なのは「固定費が高いのに売上見込みが小さい場合」です。たとえば都市型で家賃が高額な立地に出店したのに、周囲に競合が多くて客数が伸びないといった状況。こうした場合は、初期の事業計画での見込みが甘かったことが原因です。

また、変動費の見積もりが不正確でも損益分岐点は大きく狂います。たとえば原材料費が想定よりも15%高くついてしまった場合、営業利益が簡単に吹き飛びます。特に外食産業などは原価率が高く、毎月の変動費管理が命綱ともいえる存在です。

なお、フランチャイズ本部が提供する「モデル収支」だけを鵜呑みにせず、自分の立地や人件費水準に合わせて再計算することが大切です。たとえば同じ「ラーメン店フランチャイズ」でも、町田商店と幸楽苑では材料費やロイヤリティの体系が全く異なります。この差が損益分岐点に大きく影響します。

損益分岐点を理解すれば、「売上が〇〇万円あればこの事業は継続できる」「この立地では黒字化が難しいからやめる」といった判断がしやすくなります。開業後の赤字リスクを抑え、収益性を確保するには、この数字感覚を持つことが必要不可欠です。

3. フランチャイズ経営における費用負担の構造と注意点

フランチャイズでの独立・開業にあたり、見落とされがちなのが「費用負担の構造」の確認です。一般的に、フランチャイズ加盟者(オーナー)は、開業前・開業後の2段階で多くのコスト負担をします。特に脱サラ組のように潤沢な資金がない方にとって、どこまでが自己負担かを事前に正しく理解することは死活問題ともいえます。

開業前にかかる費用には、加盟金、保証金、物件取得費、内装・設備工事費、什器備品代などがあり、これらは数百万円から数千万円に上ることもあります。たとえば、コンビニエンスストアのフランチャイズでは、セブンイレブンで約300〜1000万円、ローソンで約300万円程度が目安です。さらに飲食業では、1,000万円以上かかるケースも珍しくありません。

ここで注目すべきは、「本部との費用分担」です。一部のフランチャイズ本部では内装費や研修費を一部負担する場合もありますが、ほとんどのコストはオーナー負担となります。さらに、開業後もロイヤリティ、広告宣伝費、システム利用料、物流手数料など、継続的な支払いが発生します。

こちらで、フランチャイズにおける費用負担の実態と閉店リスクについて詳しく紹介しています。

また、フランチャイズ契約書の細かい部分に「特別補修費の負担は加盟者」や「什器・備品の買い取り義務あり」など、見落としやすいコストが書かれていることもあります。このような契約内容を見落としてしまうと、運営中に「思ったよりも負担が重い」と感じてしまい、結果的に撤退・閉店につながるケースもあります。

4. フランチャイズの閉店率が高い業種とその理由

フランチャイズでの独立や脱サラを考える際、「どの業種を選ぶか」は収益性以上に、 生存率や閉店率 という観点での検討も不可欠です。華々しくオープンしても、数年で撤退してしまうフランチャイズ店舗が多いことは事実です。実際に中小企業庁の調査などでも、 5年以内に撤退するフランチャイズ店舗の割合は30%前後 と言われています。では、なぜ閉店に至るのか? そして閉店率が高い業種とは?

まず、閉店率が高い傾向にあるのが 飲食業全般 です。とりわけ「個人が初めて参入しやすい低価格帯飲食業」ほど閉店リスクが高まります。ラーメン店、カレー店、唐揚げ専門店、テイクアウト専門業態などは、初期投資が比較的少なく済む代わりに競争も激しく、1年以内に撤退するケースも珍しくありません。たとえば、都内で急増した唐揚げフランチャイズ店では、出店後1年以内での閉店率が20%を超えるというデータもあります。

その理由の一つは、 変動費の高さと薄利多売モデルの限界 です。食材原価が40%前後、人件費が30%近くかかると、固定費を引いた後に残る営業利益は5%にも満たないことが多いです。少しでも客数が減れば即赤字、という構造なのです。

もう一つの要因は、 競合過多と立地依存型モデル です。同じ通りに同業態の店が複数ある場合、わずかな差で大きな売上差が生まれます。さらに、デリバリーやテイクアウトサービスの流行で立地の重要性が変化しているにもかかわらず、旧来型のモデルに依存している本部も存在します。これが、オーナーの柔軟な経営判断を妨げ、結果的に撤退へとつながってしまうのです。

また、 本部のサポート力が低い ことも閉店リスクを上げる大きな要因です。開業前の指導は丁寧でも、オープン後は「マニュアルだけ渡して終わり」というケースもあります。こうなると未経験者にとっては、日々のオペレーションもままならず、経営の立て直しができません。

一方で、 低閉店率の業種 としては、教育系(公文式や学研)、修理・メンテナンス系、介護・訪問看護系、そしてBtoB(企業向け)型サービス業などが挙げられます。これらの業態は顧客のリピート率が高く、価格競争にも巻き込まれにくいため、長期安定経営が可能です。

閉店率の高い業種に参入する場合は、単に「初期費用が安い」「人気がある」という理由ではなく、 収益モデルと費用構造、そして自分自身のスキルとの相性 をしっかりと検討することが求められます。業種選びを誤れば、たとえ立地や設備が良くても、長続きしないリスクは極めて高くなります。

5. 損益分岐点を下げるためのコストコントロール術

フランチャイズ経営において、収益性を高めるために最も即効性がある手法のひとつが、「損益分岐点の引き下げ」です。つまり、「売上が少なくても黒字化できる体質にする」ということ。これは独立や脱サラ後に事業を軌道に乗せる上で、非常に実践的なアプローチになります。

では、どうすれば損益分岐点を下げられるのでしょうか。まず重要なのは「固定費の見直し」です。フランチャイズでは、家賃・人件費・ロイヤリティが固定費の3大要素ですが、このうち最も削減可能性が高いのが人件費です。たとえば、営業時間の短縮やシフトの組み換えにより、必要最小限のスタッフ数で運営できれば、月数十万円規模の削減が可能になります。

また、最近注目されているのが 無人店舗型のフランチャイズ です。24時間営業で人件費ゼロに近づけるモデルで、たとえば「おたからや」や「無人ホルモン直売所」などはこのモデルで急成長しました。家賃は高くなりがちですが、人件費の削減でバランスを取ることができます。

次に、 変動費のコントロール です。これは主に「原価率の見直し」「仕入先の最適化」「廃棄ロスの削減」などが該当します。飲食業であれば、材料の発注量を細かく管理するだけでも、月数万円以上の変動費圧縮が可能です。また、安定した仕入ルートを確保することで、原価のブレを抑えることも大切です。

ロイヤリティ体系の見直しも大きな鍵となります。中には「固定ロイヤリティ」と「変動ロイヤリティ(売上連動型)」を選べる本部もあります。売上の波が大きい業態であれば、変動型を選ぶことで損益分岐点が下がりやすくなります。たとえば、カフェ業態で人気の「星野珈琲店」などは、売上に応じた柔軟なロイヤリティ体系を導入しています。

最後に、 業務効率の改善 も忘れてはなりません。POSシステムや自動釣銭機など、初期費用はかかりますが、長期的には人件費削減・ミス防止による利益改善につながります。さらに、事務作業の簡略化により、オーナーが売上向上施策に集中できるメリットもあります。

このように、固定費・変動費・業務フローなど、複数の角度からコストを見直すことで、損益分岐点を引き下げることが可能です。 「低コスト体質」は不況や市場変化に強い経営の土台 になります。最初から完璧を目指さずとも、開業後に一つひとつ改善していく視点が、結果的に長く続くフランチャイズ経営を実現させるのです。

6. フランチャイズの費用構造を見極めるチェックポイント

フランチャイズでの独立や脱サラを成功させるためには、「費用構造を見抜く力」が不可欠です。単に「初期費用が安いから」「人気があるから」という理由で加盟してしまうと、後から思わぬコストに苦しめられることになります。では、どのような点をチェックすればよいのでしょうか?

まず最初に確認すべきは、「ロイヤリティ体系」です。ロイヤリティとは、本部に支払う使用料のようなもので、月額固定・売上連動(%)・粗利連動・定率+定額のミックス型など様々な種類があります。たとえば、セブンイレブンでは粗利益連動型のロイヤリティ制度を導入しており、経費削減ができるオーナーにとっては有利です。一方で、売上が低くても一定額の支払いが求められる固定型ロイヤリティの場合、損益分岐点が上がりやすくなります。

次に、広告費や本部指定の費用負担の有無も見逃せません。たとえば、「月に5万円の広告費を強制的に本部に支払う」「指定業者からしか仕入れができない」といった条件は、コストが膨らむ一因です。パンフレットには記載がなく、加盟契約書の末尾にひっそりと書かれているケースもあるので、契約前の精読は必須です。

さらに、「設備投資の範囲」も注意すべきです。冷蔵庫や什器、内装工事など、どこまでが加盟者負担で、どこまでが本部支援かを把握しましょう。たとえば、「本部が内装費の一部を補助する」と謳っていても、条件付きであり、結果的には加盟者の負担が大半になることもあります。

また、加盟後に本部から追加費用を請求されることもあります。例として、「新メニュー導入に伴う厨房改装」「レジシステム更新」などが挙げられます。これらが強制される場合、損益計画に大きな狂いが生じます。

費用構造の透明性が高い本部ほど、加盟者との信頼関係が築かれやすく、長期的な成功につながります。特にフランチャイズ初心者は、説明会や資料だけではなく、実際に運営しているオーナーの声を聞いたり、契約書を第三者(専門家)に見てもらうことをおすすめします。

7. フランチャイズ契約時に注意すべき費用トラブルの例

フランチャイズ契約には多くの魅力がある一方で、「費用トラブル」は最も多く発生するリスク領域のひとつです。独立・脱サラを目指す人が安心してスタートを切るためには、事前にどのようなトラブルがあるのかを知っておく必要があります。

代表的なトラブル例の一つが、「想定より大幅に高かった初期費用」です。説明会では「500万円で開業可能」と言われたにもかかわらず、契約後に「研修費用」「開業準備サポート費用」「指定業者での設備工事費」などが追加され、結果的に800万円近くかかったというケースもあります。

次に多いのが、「本部指定の取引先との契約に伴うコスト高」です。たとえば、飲食系フランチャイズでは、食材や包装資材の仕入れ先が本部指定であることが多く、一般の市場価格よりも高額に設定されている場合があります。これにより変動費が高騰し、想定していた利益率が実現できないという事態に直面するのです。

また、「途中解約による違約金」も重大な費用トラブルです。仮に5年契約でスタートしたにもかかわらず、2年で事業をやめた場合、「残り3年分のロイヤリティ」を請求されたというケースも報告されています。こうした違約金の取り決めは、契約書に細かく記載されているものの、見落とされがちです。

こちらで、フランチャイズ契約時のトラブル例とその回避法について詳しく紹介しています。

加えて、契約更新時の費用変更も要注意です。「2年目以降にロイヤリティが引き上げられる」「システム利用料が追加される」など、長期運営を前提とした事業計画を立てていた加盟者にとっては、致命的な変化になりかねません。

これらのトラブルを回避するには、「契約書を第三者に確認してもらう」「想定外の支出項目があるかを明確に質問する」「事業継続に必要な支出を最低3年間分シミュレーションする」などの対策が有効です。

8. 損益分岐点の下げ方とリアルなシミュレーション方法

フランチャイズで黒字経営を目指すために、最も現実的で効果の高い施策が「損益分岐点を下げる」ことです。損益分岐点とは、売上と支出がイコールになる売上高のことで、これを下回ると赤字、上回れば黒字という経営の分かれ目となる数値です。

この損益分岐点を下げるためには、大きく分けて「固定費の削減」と「変動費率の改善」が重要です。

まず固定費の代表格である家賃・人件費・ロイヤリティを見直しましょう。立地についても、「一等地=成功」という考えはもはや過去のものです。たとえば、郊外で駐車場付きの立地に出店した方が家賃が半分以下になり、結果的に月の固定費を10万円以上抑えられることもあります。

人件費についても、無人販売・セルフレジ・シフト最適化などの工夫で削減が可能です。最近では、からあげ専門店や冷凍弁当販売などの無人店舗型フランチャイズが注目されており、人件費がほぼゼロで済むため、損益分岐点が劇的に下がります。

次に変動費の見直しです。仕入れ原価や電気代などのコストを管理することで、粗利率を上げることができます。特に飲食系では「1品あたりの原価率」を把握しておくことが重要です。ラーメン1杯の原価率が50%を超えると、利益が出しにくくなります。原価管理の徹底は、利益確保への近道です。

リアルなシミュレーションをする際は、「月間売上=X」「変動費率=Y」「固定費=Z」として、以下の計算式を使います:

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

これに自分の見込数字を当てはめて、月ごとの売上目標を具体的に設定していきます。

9. フランチャイズ本部と加盟店の費用分担ルール

フランチャイズ契約では、費用負担がすべて加盟者に課せられるわけではありません。むしろ、どこまでを本部が負担し、どこまでを加盟店が負担するのか、その「費用分担のルール」を明確にしておくことが、後のトラブルを避けるために非常に重要です。

まず、開業前の費用に関しては、加盟金・保証金・物件取得費・内外装費・什器購入費などが加盟者負担であるのが一般的です。しかし、場合によっては「内装工事費を一部補助」「什器・備品のリース対応」などを行う本部も存在します。

開業後にかかるコストとしては、ロイヤリティ、広告分担費、研修費、物流費用、システム利用料などが挙げられます。ここでも重要なのは、「義務的支払い」なのか「選択可能」なのかという点です。たとえば、広告費の分担について、「地域に応じた裁量あり」とされていれば、交渉次第で軽減される可能性もあります。

費用分担のバランスが公平であれば、加盟者は「パートナー」としての意識を持ちやすくなりますが、すべてが加盟者負担である場合、本部への不信感が生まれ、早期撤退にもつながりかねません。

加盟前に「収支モデル」を確認する際は、どの費用が本部負担で、どこからが自己負担なのかを丁寧に質問するようにしましょう。モデル収支の前提条件が曖昧なままだと、実際の経営と乖離が生まれます。

10. 閉店リスクを最小化する戦略的な開業準備とは

フランチャイズ開業を成功させるためには、単に準備万端にするだけではなく、「閉店しないための戦略」を初期段階から組み込んでおく必要があります。

まず重要なのは、 資金繰りとキャッシュフローの確保 です。自己資金が少ないからといって、ギリギリの資金でスタートしてしまうと、予期せぬトラブルに対応できません。目安として、開業資金のほかに最低でも「半年分の運転資金」を確保することが望ましいです。

次に、 事前に撤退基準を設定しておく ことも重要です。たとえば、「3ヶ月連続で赤字の場合は撤退を検討する」「売上が損益分岐点の70%を下回った場合は見直しをする」など、あらかじめ数値的な判断軸を持っておくことで、感情ではなく論理的に経営判断ができるようになります。

そして、 フランチャイズ本部のサポート体制をチェック することも大切です。「開業支援だけで終わるのか」「月次での収支分析・改善提案があるのか」など、開業後の伴走支援があるかどうかが、長期的な生存率を大きく左右します。

このように、準備段階から戦略的な視点を持ち、万が一のリスクもシミュレーションしておくことが、閉店率を下げる最大の防御策となります。

11. フランチャイズで赤字になる店舗の共通点とは?

フランチャイズでの独立開業は、一見すると「本部のノウハウがあるから安心」「未経験でも成功できる」と思われがちです。しかし、実際には赤字に陥る店舗も一定数存在し、その多くには共通する“見落とし”があります。特に脱サラで初めてビジネスを持つ人にとって、この「赤字の理由」を事前に知っておくことは非常に重要です。

まず第一に、赤字の大きな原因として挙げられるのが「損益分岐点の見誤り」です。損益分岐点とは、売上と経費が等しくなるポイントであり、ここを超えなければ黒字にはなりません。たとえば、固定費(月60万円)+変動費率(60%)の場合、月の売上が150万円を下回ると即赤字です。この数値をシミュレーションせず、モデル収支だけで楽観的に考えてしまうと、現実とのギャップに苦しむことになります。

次に多いのが、「固定費が高すぎる」パターンです。たとえば、駅前など好立地に出店することで家賃が月30万円以上に跳ね上がると、売上が不安定な開業初期には大きな負担となります。また、家族経営ではなくスタッフを多く雇用する形でスタートすると、人件費が売上の30〜40%を占め、利益が圧迫されます。

さらに見逃せないのが、「ロイヤリティや本部への支払い過多」です。フランチャイズの中には、売上の10%前後のロイヤリティに加えて、広告費・物流費・研修費・システム利用料などが毎月定額で発生するケースもあります。これらをすべて合わせると、実質的な営業利益率は5%未満になることも珍しくありません。

そして、店舗運営スキルの不足も赤字に直結します。具体的には、「在庫管理の甘さ」「廃棄ロスの多さ」「スタッフ教育の不備」などが挙げられます。とくに飲食系では、食材原価や人件費をリアルタイムでコントロールできなければ、わずかな差で赤字に転落します。

このように、フランチャイズ店舗が赤字になる背景には「見込みの甘さ」「費用の過多」「運営スキル不足」が複合的に絡んでいます。加盟前に、自分の経営力・立地の適正・本部の支援体制を正しく見極めることが、赤字回避の第一歩です。

12. 脱サラでフランチャイズに失敗する人の典型パターン

「脱サラして自由な働き方をしたい」「自分の城を持ちたい」と考える人にとって、フランチャイズ開業は魅力的な選択肢です。しかし、実際には脱サラからの参入で失敗するケースも多く、その要因には一定のパターンがあります。ここでは、その典型パターンと対策を解説します。

まず多いのが、「準備不足で勢いだけで加盟してしまう」ケースです。サラリーマン時代には経験しなかった経理・労務・在庫管理・クレーム対応など、経営には広範な知識と対応力が必要です。開業セミナーやフランチャイズ説明会だけで判断し、実務のリアルを理解しないまま契約すると、現場で戸惑うことになります。

次に、「事業計画が甘い」パターンです。たとえば、「月商200万円で営業利益30万円」というモデル収支を鵜呑みにし、損益分岐点の検討をしないまま進むケース。さらに、設備投資や開業費用をすべて借入で賄い、開業後すぐに返済に追われるなど、キャッシュフローに余裕がない状態でスタートすると、少しの売上不振が致命傷になります。

また、「フランチャイズ本部への過信」も失敗の大きな要因です。「未経験OK」「研修あり」と書かれていても、実際には研修が2週間程度で、その後のフォローがないという例もあります。運営トラブルが起きたときに、本部が具体的な改善策を出してくれるかどうかを、事前に確認しておくことが大切です。

さらに、「自分に合わない業種を選んでしまう」という問題もあります。たとえば、人と話すのが苦手な人が接客中心のカフェ業態に参入したり、体力に不安がある人が長時間労働前提の飲食業を始めると、すぐに限界が来ます。「好きなこと」と「向いていること」は別であるという視点が求められます。

こちらで、フランチャイズ開業時の失敗要因とその見極め方について詳しく紹介しています。

13. フランチャイズの将来性を見極める3つの視点

「フランチャイズに将来性はあるのか?」という問いは、加盟を検討している誰もが抱えるものです。結論から言えば、「選び方次第で将来性は大きく変わる」というのが実情です。将来性を見極めるには、以下の3つの視点が特に重要です。

1つ目は、「市場規模と成長性」です。たとえば、少子高齢化社会においては、学習塾や高齢者向けサービス、介護関連フランチャイズが堅調です。一方で、飽和状態にある業態(例:コンビニ、唐揚げ専門店など)は競争が激しく、今から参入しても価格競争に巻き込まれやすくなります。新規参入の余地がある市場を選ぶことが将来性の鍵です。

2つ目は、「本部の柔軟性と時代対応力」です。デジタル化や人手不足といった社会課題に対応している本部は、環境変化に強く、長期的な経営がしやすいです。たとえば、「非接触オーダー」「デジタル広告」「クラウド会計」などのITツールを積極的に導入している本部は、加盟者にも大きなメリットがあります。

3つ目は、「ロイヤリティ・支援体制の見直し」です。最近では、売上連動型ではなく粗利連動型、あるいは固定費圧縮に向けた助成制度などを導入する本部も出てきています。オーナーの利益を第一に考える姿勢があるかどうかを見極めることが重要です。

14. 変動費・固定費の業種別比較と選ぶべき業態

フランチャイズを選ぶ際に、業態ごとの「固定費」「変動費」の構造を理解することは非常に重要です。業態によっては、たとえ売上が同じでも、利益の残り方が全く異なります。ここでは代表的な業態の費用構造を比較しながら、損益的に有利な業態を紹介します。

まず、飲食業(例:ラーメン店、カフェなど)は、変動費が高い業態です。食材原価、人件費、水道光熱費などが売上の60%前後を占めるケースもあります。加えて、設備投資も大きいため、初期費用も1000万円近くかかることが一般的です。家賃と人件費が高騰している都市部では、損益分岐点が高くなり、リスクが高まります。

一方、教育系フランチャイズ(例:公文式、学研教室など)は、変動費が少ないのが特徴です。主な支出は教室の賃料と教材費程度で、人件費もパート講師で賄えることが多く、初期費用も500万円以下で抑えられます。損益分岐点も低いため、継続的に黒字を出しやすいです。

また、修理・訪問サービス系(例:住宅リフォーム、害虫駆除など)は、出張型で固定費が非常に少なく済む業態です。店舗を持たず、軽バン1台で営業できるスタイルも多いため、固定費が極小で済みます。その分、利益率が高く、脱サラ後の副業・複業にも適しています。

15. VC・FCの視点で考える「利益が残る経営」とは?

最後に、VC(変動費)とFC(固定費)の考え方をベースに、「利益が残るフランチャイズ経営」の具体的な戦略についてまとめます。

まず重要なのは、固定費をいかに抑えるかです。店舗型ビジネスであれば、家賃の安い郊外エリアを選ぶ、営業時間を短縮して人件費を減らすなど、立地と営業体制の工夫が利益率に直結します。たとえば、都心で月30万円の家賃を払うよりも、郊外で月10万円の物件にするだけで年間240万円の固定費削減になります。

変動費に関しては、仕入れの見直しが最優先です。仕入先を複数比較し、可能であればスケールメリットを活かした共同購入の仕組みを活用しましょう。さらに、食材ロス・在庫の過多を防ぐ「発注精度の向上」も大きなポイントです。

このように、VCとFCを数値的に把握し、月次での分析を行うことで、「売上が落ちても利益が残る体質」=「持続可能な経営」が実現できます。売上至上主義ではなく、コスト構造の健全性にこだわることが、フランチャイズ成功の最大の鍵となるのです。

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